瀧川元気監督(後列右):河内長野市出身在住の映画監督。「撮るなら地元」との熱い想いから、「鬼ガール!!」を長編初監督作品に。
西 義浩さん(後列左):「玄米屋の玄さん」店主で、河内長野市商店連合会会長。「奥河内ムービー・プロジェクト実行委員会」の共同代表。
門脇怜音さん親子(前列):「映画塾」に興味をもち、「鬼ガール!!」にエキストラ出演。「奥河内クリエイティブアカデミー」受講生。
半野寛之さん(後列中):監督の幼なじみであり、地元河内長野市の小学校教諭。ボランティアスタッフとして映画制作に参加。
奥河内を舞台にした映画「鬼ガール!!」がいよいよ秋公開。映画会社主導で地域映画をただ撮るのではなく、地元の方と一緒につくり、盛り上げていくのが「地方創生ムービー」。昨年の夏、市内で繰り広げられた撮影現場では、地元が寄り合いクルーを支え、映画に夢や想いを抱くたくさんの人々が河内長野に集結。今、現場を振り返り、まだまだ続く「これから」についておうかがいした。
これからがはじまり 「地方創生ムービー」の5年
瀧川氏:「鬼ガール!!」は奥河内を舞台にした青春映画ですが、映画会社が大きな資金を投じて撮影するいわゆる「地域映画」ではない。地元の方と一緒に、そして府や市町村、さらに市商店連合会さんのような地域の団体から後援をもらって、「みんなでやっていこう」というスタンスでつくりあげていく「地方創生ムービー」です。僕がプロデューサーとして関わった広島県の東広島市を舞台にした「恋のしずく」(2018年)は、その代表作でその後、日本のあちこちで「地方創生ムービー」が撮られましたが、奥河内と呼ばれる河内長野にフォーカスした「鬼ガール!!」は、大阪という大きい都市では初めての作品。僕の長編初監督作になるのですが、「撮るなら地元の河内長野で!」という想いが強くて、地域の方々に話をもちかけたんです。でも最初は、「映画?ここで?」と、半信半疑でしょ。なのでプレイベントとして「映画塾」を開講して、短編3本を撮影し、ラブリーホールで上映会を開催。すると1000人以上も来場者がきてくれたんです。
怜音氏:私は学校でもらったチラシをみて「映画塾」から参加。「鬼ガール!!」のオーディションも受けたんですが、そこでも700人以上の人が! 緊張しました。
半野氏:僕も久しぶりに元気(監督)に会いたくてイベントに行ったら、すごい人で。「鬼ガール!!」では地元エキストラを募集していたので、学校の子どもたちにも声をかけ、僕は裏方のボランティアとして参加しました。
瀧川氏:そう。地域キャストを募って出演してもらったんですよ。まさに、地産地消の発想ですね。
西氏:そこから委員会を立ち上げて、市商店連合会をはじめ各団体が後援に。応援体制ができました。
瀧川氏:「映画塾」から始まった準備の1年目、実際に撮影する2年目、プロモーションと公開の3年目があって、映画がレガシー化されてイベントや商品が動き出していくのが4、5年目。ファンや観光客が増える5年計画で、まちづくりを目指していくのが「地方創生ムービー」の醍醐味です。市の観光や商店の方にもたくさん賛同いただいて、奥河内の人やモノの良さが映画で伝わればいいな、と思っています。
2019年の夏、観心寺の恩賜講堂など、河内長野のあちこちに映画の撮影クルーが。エキストラキャストの総数はなんと1,100人!
西氏:実際に映画を撮ったのは2019年の夏。協賛してくれた飲食店が、ロケ弁を用意してくれたり、長野神社のご婦人たちが温かい炊き出しをしてくれたり。どれもすごく美味しかったです。
半野氏:撮影現場にいたら、熱気がすごくて。映画には映っていない裏の絵作りが面白くて!監督という司令塔のもとでみんながクモの手足のように動いている姿、「うわ!すげーな」と、僕はただただ感動してしまって。その日その日の予定も現場の状況で目まぐるしく変わっちゃうんですよね。
舞台の裏方にもたくさんの地元の応援があり、飲食店がロケ飯を提供。「裏方が熱い!」と一丸となったボランティアスタッフ
西氏:予定時刻にロケ弁をもっていったら、「あれ、いない」って。わちゃわちゃでしたけど、文化祭的な雰囲気もあって、なんとかみんなでやり切りましたよね。
表現したい人が集結!「奥河内クリエイティブ アカデミー」
瀧川氏:撮影が終わっても、その熱が冷めないように、再び映画塾を開講して短編を撮りました。この春、4月4日(土)は第2回「映画塾」のイベント「奥河内映画祭」を開催します。秋の「鬼ガール!!」公開まで、まだまだこれからがはじまりです。また一方で、今回映画を撮ってみて、「表現したい人たちがこんなにいるんだな」という実感があって、「奥河内クリエイティブアカデミー」を立ち上げたんです。ここに門脇さんが引き続き参加してくれて、大阪市内から通ってくれる受講生もいるんですよ。
怜音氏:私も「鬼ガール!!」をキッカケに「もっと演技を学びたいな」、「表現力をつけて女優さんになりたいな」って夢ができて。
瀧川氏:講師には河内長野に縁あるアーティスト、元ザ・ブルーハーツのドラマー梶原徹也さんが音楽表現のレッスンを担当。受講生は演技にとどまらずお笑いやダンスにも取り組んでいます。さらに進化してアカデミーメンバーでラジオ局を開局してみたり、アメーバ展開中です。
半野氏:映画の撮影現場がてっぺんかなと思ってたけど、まだまだ盛り上げていきたいですよね。
西氏:映画公開前にはまちにのぼりを上げて、みんなでプロモーションしていきたいね。
瀧川氏:はい、「地方創生ムービー」の要、地域波及の4、5年目は今からです。全国の映画館で「鬼ガール!!」を観て、ここ奥河内にたくさんの人が足を運んでほしいです。
アカデミー受講生は、市内外から集まり多彩。本編に登場する門脇怜音さんをはじめ、瀧川監督作品に登場することも
Informaion
【主演】井頭愛海 【監督】瀧川元気
【原作】中村 航 【音楽】梶原徹也
【配給】SDP
【主催】奥河内ムービー・プロジェクト実行委員会
【後援】大阪府、河内長野市、富田林市、千早赤阪村、大阪府教育委員会、河内長野市教育委員会、千早赤阪村教育委員会、大阪観光局、河内長野市観光協会、千早赤阪村観光協会、河内長野市商工会、河内長野市商店連合会、河内長野青年会議所ほか
【ストーリー】
昔々、卑弥呼の側近に神様との連絡係がいた。その名は「鬼」。「鬼住<おにすみ>」と名付けられたその町は、その後縁起が悪いと「神丘<かみがおか>」と改名。今もそこで暮らす鬼の子孫で、人間のハーフである女子高校生の青春を描く。