第57回 旬素材dining近咲暮 シェフ コンさんの 「さみしがりな釣り人の釣り場での真実」

山登りやキャンプ、読書に映画観賞。世の中にはいわゆる趣味と呼ばれるものがたくさんありますが、「魚を釣る」という趣味ほど多様嗜好的なものはありません。こんにちは、三日市にある旬素材ダイニング「近咲暮」のシェフ近藤です。

 

1

 

狩猟行為としての「釣り」は、私達ヒトに刻まれたDNAの中に生きる手段という本能的欲望=「食を得る」というわかりやすい形で誰にでも理解できますが、こと現代の恵まれた世の中における「釣り」は「食を得る」という行為以外の事柄が嗜好性を高める要因になっているのです。
あなたの友人に釣り好きが100人いれば、100通り以上の釣りの楽しみ方を簡単にリストアップできます。その中には素晴らしく情緒的なものから、思わず笑ってしまうものまで含まれることでしょう。

 

最終的に魚を釣るというゴールは基本的にどれも同じなのですが・・・
大物を釣りたい人、数多く釣って大漁を味わいたい人、釣った魚を自分で料理したい人。ここまではなんとなく予想がつきますよね?
さらに、エサじゃないもので釣りたい(ルアー)、ほかの人が釣れていない中で連発したい、さらにどのように釣ったのかほかの人に言いたい、そしてうらやましがられたい。

 

2

 

マニアックなところでは、真っ暗な中、一人っきりで釣りたい、しかも満点の星空がいい! 静まりかえった山の湖畔でビルなどの人工的建造物が絶対に目に入らないシチュエーションで釣りたい。雨風と波をかぶりながら最悪の状況だけど、どうしても一匹釣りたい。自分の思い描いた戦略やオリジナルの攻め方で釣りたい、そして釣れたらその方法をドヤ顔で隣の人に言いたい。釣れなくても「以前、同じ場所でその方法で大物を釣ったことあんねんで」とか言いたい、ついでに誰も聞く耳持ってなくても「今までで一番大きな魚はこのくらいやった」とか単に大物を釣った武勇伝を語りたい。勝手に潮の流れとか解説したい。釣れないことを地球温暖化とか絡めて「言い訳」したい。自分の去年のデータとかわざわざ発表したい。とにかくおせっかいしたい。

はたまた、釣れなくていい。海に来るだけでいい、ただやさしくゆれる水面を見ていたい。そして釣り友の横に座って、景気や政治のことをボヤきたい、複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れたりしたい。今日は釣り具を持ってきてないけど釣りしている人にチョッカイ出したい。初心者みつけていらんこといいたい、そして初心者が釣れたら魚を針から外したりしていい人ぶりたい。なんか知らんけどええかげんなアドバイスをもっともらしく言いたい。とにかく知ったかぶりして「へぇ〜」とか言われたい。自分は釣れんでもええからイヤイヤついてきた彼女や家族に、とにかく一匹だけでも釣らせて喜んでいる顔を見たい、そして彼女も釣り好きになったら「次はデートで釣りに来れる!ヤッター」という人もいるかもしれない。
とにかく十人十色、千差万別。釣りの世界も世の中も人もそれぞれです。

 

3

 

で、気になる私の釣り趣ですが
「全然釣れなくてもイヤ。でも簡単にたくさん釣れてもイヤ。1日中どうにか頑張っていいサイズを3〜4匹釣りたい。でも釣れても逃して帰りますよ。だって魚は愛でるためのものですから」です。面倒くさいですね、笑。

ちなみに釣り人のほとんどは、一回の釣りに係るコストの概ね1/10で、釣れるものより大きくて美味しい魚がスーパーや市場で簡単に手に入るということを知っています。∑(゚Д゚)

こんな釣りバカたちに幸あれ!

4