河内長野の子どもが世界1位に輝いたバトントワーリング競技(以下、バトン)。日本代表選手を数々輩出する「スタジオ・キャッツアイ」は河内長野を拠点に、平野区から堺、南河内と橋本まで100名ほどの子どもたちに「たのしいバトン」指導を続けています。今回は代表指導者の東尾宜子先生にお会いし、子どもたちが秘める可能性と、バトンの魅力についてお話をおうかがいしました。
編集部:先生が河内長野でお教室を始められて、何年になるのでしょうか?
東尾氏:わたし自身は、15歳でバトンをはじめて50年、バトン講師をしながらテレビ番組でバックダンサーとして踊っていた大学時代をへて、自分の教室をひらいたんです。市内や堺など教室を広げて、南花台に事務所を移してちょうど30年ですね。南花台小学校の通りが大好きで、金剛山脈がみえて、春は桜がキレイに咲いて。あの道をお散歩すると、心が癒されます。
編集部:全国大会、そしてインターナショナルカップでも活躍されていますが、そこを目指して指導されているのでしょうか?
東尾氏:いえ、そこを目指すというか、私はいつも「バトンを通して、子どもたちの心を育てたい」ただそれだけを思ってやってきました。バトンは単なる手段であって、子どもたちに目標を持たせながら、パワーを発揮させて、いろんな価値観と出会いを経験した人間を育てたい。そう思いながらバトンに取り組んでいたら、全国大会がみえ、世界へつながってきたという感じです。
編集部:どんな子どもたちが全国大会にいけるんでしょうか?
東尾氏:バトンは運動神経が優れていなくても、身体が小柄であっても、体力がなくても誰もできるのが、このスポーツのいいところなんです。全国大会へは、「たのしいバトン」からスタートした子どもたちから、上手下手関係なく希望を聞いて、チームへ入っていきます。
編集部:選ばれし者ではなく、みんなにチャンスがあるってことですよね。そうなるとレベルの差がでてきませんか? そのなかでの全国優勝はすごいですね。
東尾氏:はい、もちろん選手自身のレベルの差はあります。だからといって団体競技ですので、途中でチームを抜けることはできません。でも子どもたちは、自分でチームに入ることを選び、関西ブロックの狭き門を突破して、全国大会へ行くこと、そこで勝つことを目標に立てたら、すごいチカラを発揮するんです。昨年の「第44回バトントワーリング全国大会」では、U-12とU-15の部門で優勝できました。今年は3月に日本代表選手として6名が選抜され、8月の「WBTFインターナショナルカップ」へむけて、さらなる目標をたてて練習しています。
編集部:河内長野在住の選手が、その「WBTFインターナショナルカップ」で金メダルを獲得したと聞きました。
東尾氏:谷川実優ちゃんですね。2015年にアーティスティックトゥワールでジュニア1位になっています。彼女は日本代表で3年連続出場して、今年はクロアチアへ行きます。
編集部:すばらしいですね。世界まで行きつく要因は?
東尾氏:小さい時の育て方が大事ですね。バトンを教えていて感じるのは、13歳までは記憶するチカラってすごくあるなって。小さければ小さいほど脳は鍛えられると肌で感じています。脳を磨いた結果、石と同じで輝きだす。いろんなことに挑戦させてあげて、「これ!」って見つかった時は、「やるって決めたらやりなさい!」と背中を押してあげられる親御さんであることも大切です。とくにお母さんがかける言葉で子どもはどんどん伸びて、すごく成長するんです。遺伝ではなく、親御さんが天才を育てると私は確信しています。
編集部:親子で素晴らしい体験をされているんですね。
東尾氏:はい、お母さんたちの協力と、100人の子どもたちがちょっと目標を持った結果が今につながっています。子どもたちの能力を引き出すことが、わたしの仕事。50年指導してきたなかで、たくさんの子どもたちと出会ったことがわたしの財産です。
東尾宜子 先生
河内長野市在住、「スタジオ・キャッツアイ」代表者。大阪スポーツバトン協会常任理事などを歴任。50年のバトン指導を通して、青少年育成に尽力。河内長野教室は毎週木曜日18:00~20:00「河内長野市総合体育館」にて。