対談「奥河内音絵巻「LUCKY for YOU!」

実に300年ぶり9年におよぶ「平成大修理」にて修復された金堂、国宝となってお帰りになられた仏様、そのお披露目となる「落慶法要」が執り行われた春。2日間で約7,000人が天野山金剛寺を訪れたビックイベントとなった。「落慶法要」の記念イベントとして実施された「金剛寺音絵巻」。あれから半年、イベントプロデューサーを務めたサキタハヂメ氏による「音絵巻」シリーズの最新作が、公益財団法人河内長野市文化振興財団の主催で、9/9(日)にラブリーホールで開催される。ラブリーホールでは4年目となる本作、演出のキーマンとなる光の切り絵作家の酒井さん、パフォーマーのベルビル育子さん、天野山金剛寺の堀さん、サキタ氏の4人に、今年の意気込みについてお話をお伺いしました。

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「落慶法要」の記念イベントとして3/31(土)・4/1(日)に催された「金剛寺音絵巻」

 

編集部:4年目に入る「奥河内音絵巻」。河内長野でインスピレーションを受けたものを、いろんな音で音楽や舞台として表現するシリーズですね。最新作は天野山金剛寺での「落慶法要」がテーマだとか?

 

サキタ氏:はい。春に「落慶法要」で集めた物語とインスピレーション、そこから生まれたモノがたくさんあって、なんとかもう一度、熱のさめへんうちにやっておきたいという想いが強くて、あの世界観を次の「奥河内音絵巻」にもってくることにしました。

 

編集部:シリーズ1回目は「木と静寂の祈り」、2回目は「幻のまつり」、3回目は「木と奏でる人々の歌」でした。今回の「LUCKY for YOU!」はどこからきたんでしょう?

 

サキタ氏:実は酒井さんが「落慶法要」を、「ラッキー・フォー・ユー」と聞き間違えて、笑。その聞き間違いが、「みんなに幸せを、すてきさを届ける。すごいいい言葉だな」って。これをそのままいただくことにいたしました!

 

酒井氏:あの時、本当にみんながそう言っているように聞こえて、笑。でもフォー・ミーではなく、フォー・ユーってすごくいいですよね。

 

編集部:そんなお二人が「落慶法要」でつくった「金剛寺音絵巻」では、光と音が融合する体験型ショーとして大盛況でしたね。あの時SNSで光の絵をアップロードする方が多かったように思います。

 

サキタ氏:みなさんすごくたのしんでくれて。酒井さんの切り絵は、プロジェクトマッピングのようなデジタル感はなく、手づくりで優しく、光のなかで有機的に遊べるのがすごいすてきなんです。これは金剛寺の桜とぴったりくるだろうという思惑からお願いいしたのですが、当日予想外に完全な満月のブルームーンが現れたんです。「酒井さん映したんかな?」って思うほど、ぴったりな演出で。その自然と光のなかで、来場者のみなさんが、光の花を手で持ち上げたり、触ったり、体に映して遊んだり。はたまた真言声明師さんが着ている衣や、頭部に花が映りこんでいるのを見て、みんなが「カワイイ!」って、思わずニヤニヤ顔で。

 

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真言宗河内真和会のみなさんは、9/9(日)ラブリーホールにも出演する

 

酒井氏:お客さんが「自分も音絵巻の一人になったみたい」と。観客ではなく、登場人物のひとりになれたと、たのしんでいただけましたね。

 

サキタ氏:あの日の感動は大きくて、酒井さんともう一回あの世界観をつくりたい! そして堀住職にもご出演いただいて、もう一度セッションしたい!と思い、今回の「奥河内音絵巻」にもオファーいたしました。

 

堀師:ちょっとびっくりしました。最初に「金剛寺にどんな音がありますか?」とサキタさんに聞かれ、たまたま「太鼓もありますよ。お経をあげながら、叩きますよ」て、話したらそこから。

 

サキタ氏:「え!!かっこいい…」て、なりました。

 

編集部:バンドメンバーとのセッションは難しいですか?

 

堀師:いえいえ、わたしはなにもなにも。わたしのお経にバンドのみなさんが合わせてくださっていて。もともと譜面はないのでね。読経しながらの太鼓は、御祈祷の時にするんです。

 

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堀師が太鼓と読経で参加。落慶法要プレイベント(2017年11月3日)での初コンサートは大反響

 

編集部:御祈祷とはこれまたラッキー感増しましたね。

 

サキタ氏:ほかにも偶然が重なって、酒井さんの描いた龍と蓮の花が、金堂の中にあって、ね。

 

酒井氏:はい、下見に訪れた時、金堂の中はまだ見学できない状況で、外からみせてもらったんです。そこから、五色幕の布の色の話になって、五色のウロコをもつ龍を描こうと。金堂に五色幕がかかることは、当時の私はわかってなくて、前日に五色幕が金堂にかかるのを知ったんです。「建物に映すつもりだった、ここに幕がくるんだ!」って。龍は出来上がっていたんですが、幕にあうようにレイアウトしなおして、五色のウロコをもつ龍を五色幕に映す、すると風になびいて龍が舞う、そうしてあの景色ができたんです。

 

サキタ氏:極彩色でしたね。

 

酒井氏:ほんと想像以上でしたね。その龍の下に、金色の蓮の花も描いたのですが、金堂に入らせていただくと、仏様のそばに金色の蓮の花が立体としてたくさんあって、龍もいた。描かせていただいた絵が金堂にあった!って。

 

サキタ氏:あの時から僕は、森のなかに入って風がふくと龍が舞っているように思うんですよ。

 

酒井氏:あの場所にいたあの感覚っていうのは、わたしも今まで経験したことのない2時間、3時間でした。金剛寺さんの特別な空間、またあの時間は月夜で桜があって、次はあの空気感をどうやってホールにもっていくのか、そこが今回のチャレンジです。

 

編集部:すてきな偶然と体験ができたんですね。真言声明さんも五色幕と龍も、蓮の花も、次の舞台はラブリーホールでということですね。

 

サキタ氏:はい、金剛寺の桜をホールにもってくるわけにはいかないので、そこをホールでやるにも関わらず、あの時空を超えた広がりをつくりたいと思っています。今回は「布をたくさん使った動き」、「鏡の反射」、「いろんな角度から聴こえてくるサウンド」その中で体験してもらう舞台になります。

 

酒井氏:映し方の妙ですね。天井・地面、布、お客様、絵をどうそこに映すかがポイントになってくると思います。桜、蓮の花、龍も。

 

編集部:立体的な仕掛けをつくるんですか?

 

サキタ氏:そうです。「金剛寺音絵巻」をベースにしながら、布とか鏡とかを使って、万華鏡の中に飛び込んだような360度の全方向体験型ショーをつくれればな、と。人の魂や想いが天に戻っていったり、また僕らのもとに戻ってきたりする地面より上の世界をつくりたい、エアリアルだ! 布で上に上がっていくイメージが思い浮かんだ時、「いくらサーカス」の育子さんと出会えたんです。

 

ベルビル育子:わたしはサーカスの教室を開いていて、登っていったり、落ちていったりができるエアリアルティシューや、ハンモックでの表現をすることができます。今回の「奥河内音絵巻」では空間のなかで、いかに絵本の世界で舞えるか、その一部に自分たちの身体でうまく音を奏でられるようにと考えています。サキタさんからは、「水の感じ」という話があったので、水や風の動きもポイントですね。

 

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人が空中に浮く感じを表現するエアリアルティシュー

 

サキタ氏:水っていう要素は、滝畑の光滝からのイメージです。これまでの音絵巻シリーズでも、水は常にテーマに使い続けているのですが、今回は水の中側「水の底」にいる感覚にしたいな。ほかにも奥河内からインスピレーションを受けた音楽ばかりですが、そのなかに「大きな輪を描く」って曲があって、これは9年ぶりに金剛寺に帰ってこられた大日如来さんを想い、書いた曲なんです。「落慶法要」と合わせて国宝となった大日如来さんは宇宙すべてのことを表していて、その大きさから足音ってどんな音かな?と思うと、みんなの輪がみえて、その輪の上には、光輝くものがあって、生きている世界なのか、次の世界なのかわからなくなる、すごく幸せな気持ちになる音楽ができたんです。そこに向かうまでの、月であったり、蓮であったり、命のバトンであったり。最後にみんなで大きな金色の光のなかにつつまれる世界をつくりたい!

 

編集部:金の輪など、お話にでてくるアイテムを聞いていると、ラッキー感増し増しですね。

 

サキタ氏:ぜひとも当日は白い服で来ていただきたい! いっぱい金の輪や蓮の花をご自身に映してほしいです。

 

編集部:ラッキーがめっちゃ降り注ぎそうですね。大阪人には響きそう。

 

サキタ氏:「落慶法要」で「金剛寺音絵巻」を見逃した人にも、またもう一度見たい人にも、純粋にみんなに来てほしいですね。「あの物語を一回きりにしたくない。海外に持っていきたい」と、いつもそう思っています。ここは大阪にありながら、自然豊かで、歴史や文化財、いろんなモノや人がそろっているまちなのに、音楽にも本にもなっていない。知れば知るほどに面白いのに、もったいなくて。今回僕は、お客さんが感覚をフルで使ってもらえるようなもんをつくりたい。完全に目をつぶって、音がいろんなところから飛んでくるとか、あえて耳をふさいで音を感じてもらうとか、新たな「奥河内音絵巻」をぜひ体感してほしいです。

 

編集部:前回の大ホールでの動員数は1100人超え、ソールドアウトでしたね。今回は小ホール。1回公演につき200人×3回で600人が定員ですね。早めにゲットしていたほうがいいですね。チケットはラブリーホール他で好評発売中です!

 

サキタ氏:これまたラッキー!な。

 

編集部:幸運がいっぱい降り注ぎそうな60分間「LUCKY for YOU!」を楽しみにしていますね。

 

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左から酒井敦美さん・サキタハヂメさん・堀智真さん・ベルビル育子さん

 

サキタハヂメ[音楽家] ミュージカルソー(のこぎり)奏者。作曲家。NHK Eテレ「シャキーン!」日本テレビ「妖怪人間ベム」など、全国放送のTV番組で多数の楽曲を提供。河内長野が面白くなり移住。芸術監督として総指揮をとる「奥河内音絵巻」は4年目を迎え、地域を面白がる創作を続けている。

 

酒井敦美[光の切り絵作家] 「切り絵」に「光」を透して表現するオリジナル作品を「光の切り絵」と名付け、制作と発表を続けている。街路や自然の中に切り絵を投影する「野外幻灯」などがあり、天野山金剛寺の「落慶祭」でも「金剛寺音絵巻」の演出を手掛けた。

 

ベルビル育子[いくらサーカス代表] インドネシアで空中ブランコアーティストとして勤務後、オーストラリア国立サーカス大学にてサーカスアーツを学ぶ。大阪弁天町にいくらサーカス(サーカス学校)を設立し、空中演技の指導、サーカスショーの演出をしている。

 

堀智真[天野山金剛寺座主] 奈良時代に創建された天野山金剛寺の第78代目座主。300年ぶりとなる金堂の「平成大修理」を父である先代座主より受け継ぎ、去る3月に「落慶法要」を執り行った。

 

 

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