【奥河内のチカラ】第14回 ありのままの田舎がいい 古民家をリノベーション

ありのままの田舎がいい

 

山﨑 一弘さん(左):「天見温泉南天苑」店主。天見のビレッジ構想の第一歩として、天見の古民家を改修中。仲間とともにNPO法人エリアリノベーションを立ち上げて河内長野駅前の活性化にも力を注ぐ。

 

林田 亮一さん・安奈さん(右):亮一さんは一級建築士、妻の安奈さんは二級建築士のご夫婦。河内長野市で育ち、西代町にある長屋を改修して「林田建築設計事務所」及び「深河内ポート」を2018年に立ち上げた。

 

人口減少にともない郊外の空き家問題、都心回帰もちらほら聞かれるなか、築年数の経った古い建物を活用して、まちを活性化していこうという動きが起こっている。今回のチカラでは、天見の古民家を利用したビレッジ構想を練る山﨑さんと、河内長野で育った建築士の林田さんご夫妻にお会いし、それぞれが手掛ける古民家で、これからの地域活性についてお話を聞いてきた。

 

おもしろい伝承が残る天見で人々の記憶と足跡をそのまま残したい

 

亮一氏:こちらの御屋敷で築何年ほどでしょうか?

 

山崎氏:ご当主からは「安土桃山時代からの建物だ」と聞いています。天見は数多くの伝承が残っていて、おもしろい場所なんです。その昔、天見に与三兵衛・喜三兵衛という宮大工がいて、豊臣秀吉配下の増田長盛の徴用でめされ、「聚楽第」や「淀城」の建築に従事して功績を残したのちに天見へ帰還し、二人で建てたのが、この屋敷という話が残っています。大昔からの口伝なので、もちろん文書などはないのですが、南天苑自体も大浜からの移築話は、ずっと伝承でした。それが辰野金吾の建築物だと証明されたのは、平成になってからのことです。

 

亮一氏:確かに蔵の梁をみても、自然の松を活かしたいい梁を使っていますね。

 

山崎氏:天見はこういったお屋敷があって、そこが空き家として増えつつあるんです。ここを南天苑の別館「久右衛門」と名付けて、お客様のレセプションハウスにしようと。土間から続く和室は食事処にし、明治23年に建てられた門屋や、蔵を使った客室は3室ほど。ゆくゆくはこういった古民家を活用して客室を増やし、お客様は天見を散策、回遊できるビレッジ構想を考えているんです。

 

亮一氏:僕も今、人口が1千~3千人ほどの村へと仕事でいくんですが、余った建物は村に寄贈されていますね。役人さんの意識が高い地域では、「そこで何できるか!」と建築士やコンサルと一緒に改修をして、また新たに価値を付けていく動きがよくみられます。

 

山崎氏:河内長野はそういった潜在的な資源の宝庫です。ここも実は天見駅から15分の徒歩圏内。天見はとくに目玉となるような観光資源があるわけでもないのですが、南天苑にいらっしゃるお客様は外国からの来客と、国内からの来客との比率が逆転してしまいました。そのほとんどは南天苑で宿泊することを目的に来ていただいているようです。長年南天苑を営み、というか年を重ねるうちに、天見の田舎に来てもらって、ありのままをみてほしい。元々あったものはできるだけ残したい、ここ「久右衛門」には家庭らしい子どもの落書きなどが残されていますが、そんな人々の記憶や足跡を残していきたいな、と思っています。

 

ありのままの田舎がいい
古き良きお屋敷「久右衛門」。メインの続き間ではオーガニックレストランを、2020年にオープン計画中。

 

都会的な装いではなくゴリゴリで直球な田舎推し

 

安奈氏:天見に移住される方はいらっしゃらないのですか?

 

山崎氏:移住は少ないでしょうね。

 

安奈氏:意外と貸せるような空き家が少ないとか?

 

山崎氏:いや、持ち主との間に入る方がいらっしゃらないのではないかな。私が仲間と一緒に立ち上げた「エリアリノベーション」というNPO法人で、その間に入る役割を担おうと。営利目的でなく、空き家をいろんな人に活用してもらえるようネゴシエイトできるバッファー(緩衝材)になろうと話しています。長野駅前周辺でもそんな動きがあります。

 

亮一氏:僕らの事務所も、地元の方から築85年ほどの長屋をお借りしています。2階は仕事場に使って、1階は「深河内ポート」という交流スペースにしています。実は、仲間と「河内長野は奥じゃなくて深いよね」って話になり、今「奥河内」に対抗して「深河内」っていうくだらない集団をやってまして、笑。田舎やから田舎っぽいままでいいんちゃう、都会的なプロデュースをするんじゃなくて、あえてゴリゴリなほどに直球で、田舎を推していこう!がコンセプトです。先日、麹と味噌を作っている同級生が、「木の樽で醤油を仕込みたい」という話になって醤油蔵の上堂さんにつないだんです。

 

山崎氏:あの醤油蔵で仕込んでるんですか?

 

亮一氏:はい、上堂さんも何十年かぶりに醤油ができることを喜んでくださって。そういうすでにある場所を使って、ゴリゴリ感あるモノをつくろう、と。河内長野の人にとってはどうでもいいモノでも価値があるし、外から人がやってきて、それに気づいてくれたらうれしい。田舎にくる人は田舎らしいごはんを期待している。田舎らしさを売りにするほうがニーズはあると思うんです。

 

山崎氏:確かに山奥へ来た特色を求められることが多いですね。お客様もよくわかっていらっしゃる。

 

亮一氏:素朴なもんでも他にはなかったりして、地域の特色がでるもんもありますしね。日野の半夏生餅も、河内長野育ちの僕らはぜんぜん知らなかったけど面白い。そういうのも、みんなで伝えていけたらなって。

 

山崎氏:河内長野の駅前は強い気がしますね。人が電車やバスにのってやってくるエリアのハブになる。今は「シャッター商店街」と言われてますが、それこそ自然体。そこにアイデア次第で、人が三々五々集まってくる可能性があります。

 

亮一氏:今、僕たちがそれぞれやっていることが点となり、それが面となって河内長野の空気を変えていけたら。だから僕はゴリゴリなくらい河内長野の田舎らしさを推していきます、笑。

 

山崎氏:みんなで動かせるのは40代が最後かも、人口のボリュームゾーンですからね。頑張っていきたいですね。

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築85年ほどの2軒長屋を改修した林田設計事務所兼「深河内ポート」。1階は交流スペースになり、限定のイベントも行われている。昭和な建物ながら、建築家ご夫婦のセンスが随所に光るすてきな空間。「この素朴さが気に入って」と話す林田ご夫婦。

 


Informaion

天見にオーガニックレストラン「久右衛門」計画中!

久右衛門 

南天苑の別館「久右衛門」は2020年にオープン計画中。一般利用できるレストランを併設し、地域の食材をつかってオーガニック料理を創作していく。オープンまでは期間限定イベントも。詳細は南天苑のWEB上にて随時アップ。

 

河内長野市天見346
[問合せ]0721-68-8081 (代)南天苑

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「深河内ポート」発信!ゴリゴリイベント「金曜ナンチャラ」

金曜ナンチャラ 

毎週金曜日に地域のゴリゴリなモノを販売するマルシェや、喫茶店をオープン。「金曜珈琲」だったり、「金曜野菜」だったり。その週、何ができるかはお楽しみに。詳細はインスタグラムとリアルSNSにて随時案内。

河内長野市西代町2-7
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